批評(ex.goma油)

批評(ex.goma油)

趣味の批評をしてみたいと思いました。

やさしい人を、おろおろとさがす

『バクネヤング』という漫画があった。

高校生のころヤングサンデーで連載していたその漫画は、暴力的でちょっと変わっていて記憶に残っていた。自分の頭の中のフォルダ分けとしては、同じころにモーニングで連載していた『国民クイズ』と同じ場所。多感で背伸びしたい時期に、不思議な感触を残していた漫画である。

 

先日、図書館でいしかわじゅんの『漫画ノート(バジリコ)』という本を借りて読んだら、『バクネヤング』のことが書いてあった。それで私はまた『バクネヤング』のことを思い出し、作者の松永豊和は最近どんなものを描いているのか、それとももう描いていないのか気になって調べてみることにした。

 

あの松永豊和は今

 

こちらが思っていたことがホームページの名前になっていて、おかしかった。そこで出会ったのが今回のテーマ、web漫画『パペラキュウ』である。

 

パペラキュウ。おかしな言葉だ。

 

この漫画は、パペラキュウという奇妙な病気(なのかはわからないが)についてのお話である。現在第3部まで進行し、物語がまた大きな展開を見せているので、まだまだ終わらないだろう予感がする。

 

一読して思ったこと。この人はなんとやさしい人だろう。

一見してわかるマイノリティへのあたたかい眼差し、人間個々人への、どれほど異常な者であろうと肯定する姿勢。暴力的な描写もあるにはあるが、この人がやさしくないわけがない。

 

想像でしかないが、松永はおそらくこの漫画を、自分のHPのみで無報酬で描いている。それはいかん。いましろたかしの『デメキング完結版(太田出版)』の帯に峯田和伸が書いていた「誰か、はやくこの天才を助けてやれ!」という言葉をそのまま松永におくりたい。こんな傑作をwebだけに置いておくのはもったいない。

 

もし単行本が出たら買う。

 

「何でも無料の現代において、作り手への感謝をあらわすためにちゃんとお金を払って買うものは買う。それが作り手の新たな力となるのだ」と、ある人が言っていた。

 

全くその通り。読み始めたら一気に最後まで連れて行かれてしまうようなこんな魅力的な作品を、どこか出さないのか。逮捕されたから及び腰になっているのか。それはそれとして、作品に罪はないだろう。と、一体誰に対してこの文章を書いているのかわからなくなってきたので終わろう。

 

最後に、あるシーンでTMGEの『世界の終わり』と、SEKAI NO OWARIが隣り合って描かれていたのがキュートだと思った。

 

THE STREET SLIDERSの『のら犬にさえなれない』を聴きながら。